[圧力センサーベーシック#12ウォームアップドリフト]
 
圧力センサーのウォームアップドリフトを最小化させる方法

圧力センサーのウォームアップドリフトは、システムが動作温度に達するまで読み値を変化させてしまいます。通常は大きな問題ではありませんが、常に高い精度を必要とする人工呼吸器や肺活量測定機器、新生児モニタリング装置などの機器においては、これを許容しておくことはできません。また基本的に半導体圧力センサーを評価する際、ウォームアップドリフトの影響を理解しておくことは重要なこととなります。


 半導体圧力センサーは、ダイ表面状に4つのピエゾ抵抗素子を伴った薄いシリコンダイアフラムによって構成されています。ピエゾ抵抗素子は、圧力感度を抵抗値のアンバランスな変化で感知し、それらは一般的にはブリッジ回路の構成になっています。ダイアフラムの歪み感度を最適化するために、正確にダイアフラム面状に配置され、さらにダイアフラムの圧力差応答を最大にしています。


ウォームアップシフト
圧力センサーにおけるウォームアップドリフトの主要な要素は2つあります。1つはセンシング要素におけるウォームアップシフトです。システムが動作温度に達する間、ダイとダイアフラム面上における表面温度とホットスポット温度は、抵抗ブリッジのアンバランスを引き起こします。抵抗体素子の温度上昇は消費電力に比例しており、よって励起電圧の2乗に比例します(ΔTαV 2)。
それゆえ、励起電圧を半分に下げる事によってセンシング要素の温度上昇は4分の1に下がり、結果的に、ウォームアップ時の表面状態は4分の1に下がります。センサーの信号レベルも半分に下がる(電源電圧も下がる)ため、ウォームアップ誤差における全体の影響は半分に下がります。しかし、センサー電源を下げる事は、システムの電気ノイズレベルにとって逆効果となります。


電源電圧を下げるための良い方法は、システムのバンド幅によって必要とされるセンサー電源を調節する方法です。言い換えると、センサーの電源電圧は必要な時だけ供給する方法です。つまり時間平均(デューティーサイクル)におけるセンサーへの電源電圧を下げることによって、ウォームアップドリフトを下げることになります。この方法は少しばかり高度な技術が必要となりますが、システムノイズレベルに影響を与える事なく素晴らしい結果をもたらしてくれます。

例における電源電圧のタイミングpは、電源がオフからオンまでの時間です。これは全信号を安定させセンサー出力値を得るために必要です。
例えば、500ミリ秒ごとに出力、4ミリ秒の設定時間、1ミリ秒の信号入力時間が必要な機器を考えてみてください。センサーの平均消費電力は、無調整のシステムの電力に比べたった1%([1 ミリ秒 + 4 ミリ秒]/500 ミリ秒)となります。もちろん、このタイミングは実際のサンプリングの要求タイミングによりますが、実際は少し変化するためpと時刻tが一定である事は重要です。しかし、センサー電源を調整するメリットを考慮するとこれは大きな制約ではありません。




温度補正技術
ウォームアップドリフトのもう1つの要素は、システムの温度補正技術に関するものです。システムには圧力センサーの温度影響を補正するため外部温度センサーがついています。デュアルセンサーシステムには、外部機器とダイアフラムの表面との温度勾配があります。温度勾配を安定化させるための時間が、ウォームアップドリフトとして認識されています。
この影響を最小限にする事は、センサー抵抗(温度によるブリッジ抵抗変化)を温度センシング要素として使用する事によって達成されます。圧力センサーのブリッジ回路は、通常回路におけるサーミスタ(温度変化を測定するのに使用される抵抗の種類)機能としてホイートストンブリッジ回路がその役目を代行しています。
センサーブリッジは、抵抗(TCR)としてポジティブな温度影響を持っているため、温度が上がるにつれて回路の温度監視部分で出力電圧(Vt)に負の電荷が溜まります。基準電位(Vref)に対してVtにおける変化はセンサー自体の温度測定には有効です。センサーのシステム回路は、この測定を圧力センサーに関する較正温度として使用しています。外部温度センサーが関係していないため、ウォームアップドリフトは排除され、温度勾配はなくなります。電源の調整や温度補正方法は、ウォームアップドリフトの影響を排除するために併用使用する事ができるのが良い点です。